私はもともと絵本が大好きで、公立の保育園で10年間保育士として働いたあとは、家庭との両立のためにパートや個人委託というかたちで保育士の仕事を続けてきました。子どもたちに少しずつ手がかからなくなってきたころ、「何か新しいことに挑戦したい」「大好きな保育士の仕事にプラスになる資格はないか」と思い、調べているうちに出会ったのが「絵本専門士」という資格でした。
応募資格は十分だった
絵本専門士の応募要件は、絵本や子どもの読書活動に関わる3年以上の実務経験があること。当時の私には保育士として20年の実務経験があり、保育園・幼稚園・発達支援施設と、幅広い年齢の子どもたちと関わってきた経験もありました。応募要件は十分満たしていると思い、400字の応募文を書いて提出しました。当時、保育士向けのブログも運営していたこともあり、「多くの保育士に絵本の魅力を伝えたい」という思いを込めて書いたのを覚えています。
一次選考落ち。応募者1,600人以上という狭き門
結果は一次選考で不合格でした。この年の応募者数は1,600人以上。受講できるのは全国でわずか70名、年に一度しかない、とても倍率の高い選考です。それでも私は「絶対に受けたい」と思いました。
悔しさから始めた自己分析
不合格の悔しさから、私はまず自分自身をじっくり振り返りました。募集要項も改めて読み込み、分析してみました。当時、絵本専門士の職業分布のグラフを機構のサイトで確認すると、保育士・幼稚園教諭の割合はおよそ20%。職業別で選ばれているわけではないかもしれませんが、「70人中16人ほどの枠に、全国の中から入らなければならない」のだと実感しました。
そして気づいたのです。何年も子どもたちに絵本を読んできた保育士は、全国にたくさんいる。今の私がこのまま受講できて絵本専門士になれたとしても、基本的には自分が勤める園の子どもたちにしかその専門性を活かせない、と。もっと多くの子どもたちや地域の人たちに絵本の魅力を伝えられる人が求められているのではないか——一次選考に落ちたその時に、そう感じてすぐに「どうしたら受講資格を得られるか」を考え始めました。
保育園の外へ。地域のおはなし会団体に参加
私は地元で長年「おはなし会」の活動をしている団体に、図書館を通じてコンタクトを取り、メンバーに加えていただきました。大人のためのおはなし会や小学校でのおはなし会、ブックスタートなども行っているボランティア団体です。週1回の活動に参加させてもらい、先輩たちから絵本の読み聞かせや児童文学について、たくさんのことを学ばせていただきました。
翌年、合格——1,300人の中の70人、第11期生に
そして次の年、無事に受講資格を得ることができました。この年の応募者数は1,300人。その中から選ばれる70人、第11期生の一人に、私も入ることができたのです。一次・二次選考とも、はじめに応募した400字の応募文と、絵本と関わってきた履歴書のみでの選考でした。自分の番号が受講者の名簿に載っているのを見つけたときは、本当に嬉しかったのを覚えています。
そして今——仲間と「絵本と子育てラボ」を設立
その後、2年半にわたってお世話になったおはなし会のボランティア団体は卒業しましたが、そこで得たつながりや学びは今も私の活動の土台になっています。令和7年には、仲間とともに任意団体「絵本と子育てラボ」を立ち上げました。絵本専門士としての専門性と保育士としての現場経験を活かしながら、絵本を通じた子育て支援の活動を続けています。
保育士以外からのルートも
絵本専門士は、保育士だけが目指せる資格ではありません。大学や短大などで絵本の基礎知識や読み聞かせの技術を学んだ学生に与えられる「認定絵本士」という資格もあり、認定絵本士を取得したあと、絵本に関わる実務経験を積むことで絵本専門士にステップアップする人も出てきています。バックグラウンドはさまざまですが、保育の現場で長年子どもたちと絵本に向き合ってきた保育士だからこそ活かせる経験があると、私は感じています。
絵本専門士講座の概要(費用・期間)
- 受講料:80,000円(税込)
- 総授業時間:50時間程度(5回連続の講座)
※募集人数や会場、日程などの詳細は年度によって変わる場合があります。たとえば令和8年度からは、より多くの方が受講できるよう会場が拡大される予定です。最新の募集要項は、下記の公式サイトでご確認ください。
これから受講を考えている保育士さんへ
絵本専門士の選考は、決して簡単なものではありません。一次選考で不合格になったとき、私も「もう無理かもしれない」と思いました。それでも、なぜ受かりたいのか、自分に何ができるのかを見つめ直したことが、結果的に翌年の合格につながったのだと思います。
もし今、一次選考で悔しい思いをしている方がいたら、保育の現場での経験は決して無駄にはなりません。園の外に一歩踏み出してみることで、見えてくるものがきっとあります。保育士としての実務経験を活かしながら絵本専門士を目指す方を、私は心から応援しています。
絵本専門士としての知識を活かした選書サービスや、保育士・保育施設向けの講演・研修も行っています。ご興味のある方はぜひご覧ください。


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